祭りのあとに、君たちはどう生きるかー映画『君たちはどう生きるか』についてー

主人公の眞人は、祭りのあとを生きている。母を失った、母を助けられなかったという過去が、彼の現実を捉えて離さない。彼は自分で自分を傷つける。新しい母も受け入れられない。

 

そんな彼に、「下の世界」が誘いかける。それは幻想であり、フィクションであり、内的世界であり、現実の源でもある。「下の世界」には入り口がいくつもあり、祭りのあとを生きる人々が誘い込まれていく。彼はそこで様々な経験をし、他者もまた自分と同じような傷を抱えていることを知る。

 

「下の世界」の創造者は、眞人に後継をお願いする。争いに満ちた現実ではなく、悪意のない「下の世界」を創造するのだと。しかし眞人は、仲間と共に、現実を生きる決意をする。

 

「下の世界」など存在しなかったかのように、現実は続く。人々は「下の世界」のことなどすぐ忘れる。眞人は『君たちはどう生きるか』と共に、自分自身の傷と新しい母を受け入れ、現実を生きていく。